2015年02月13日

メダカ館(和泉克雄)/子育てしながら小説を読むと

さがしてもどうにも売っていないのだが、「メダカ館」という小説が面白い。和泉克雄(2002/07/03)鱗片社、¥5000。単行本で p.830 の長編。著者85歳ごろの作品だ。数年前まで、改良園の会報誌「園芸世界」に再連載されていた。この度本棚の整理整頓をしていて思い出したのだ。途中から読み始め、最後は中途で連載を終了されてしまった。手に入らないものと思ってすっかりと読了を諦めていた。


_MG_0894_1s.jpg

主人公一家に着かず離れず存在をまとわりつかせる友人、千田光吉の存在感が異形なのだ。幼少時からメダカが大好き。戦中もメダカへの情熱を糧にして兵役に耐え抜く。戦後、デパートの屋上でメダカ(グッピー)を売る。その店のブラックモーリーに魅せられて主人公が客として足を止めたのがなれそめだ。主人公の飼育資材の注文を聞いて度胆抜かれた千田が個人売買を持ちかける。そうして長い付き合いが始まる。

銀座に「メダカ館」を作るのが夢だと熱く語る。戦後の動乱を浮いたり沈んだりしながらも図太く生き抜く。その姿は、したたかなのか純粋なのか。器用なのか不器用なのか。主人公一家の味方のような気もするし、危うくする存在のような。

そんな千田がひとたび口を開くと、意味深長な内容を断定的に延々と語る。戦後を埃っぽく語り、不気味にも思えるが的確な予言をする。気が付けば「メダカ館」ではなく出版社を作っている。ヒットを連発するが贅沢三昧。借金を作って姿をくらましたと思ったら今度は、、、そしてまた没落。唐突に東京湾から太平洋岸を伝って北上する旅を始める。そしてある日唐突に主人公の元に外国から手紙が届く。「ごぶさたしました。突然ですがテレビのクイズ番組に当たって二週間の、、、。」その手紙の中でもまた千田は突飛な、、、

所々に挟まれる五七五の句や詩が奇妙なリアルさを持って迫ってくる。

主人公一家は芝浦に住み、目黒に移る。グッピーの世界で一廉となり、執筆や講演もこなす。千田亡き5年後にメダカの世界から手を引くこととなる。

戦後の動乱からやがて浮かれるようなバブルへと向かう時代のうねり。念願だったグッピーに手を出してから、それが生業となり、やがて手を引くまで。およそ30年間にわたる「メダカ館」熱と出版とのかかわりの物語だ。

子育てをしながら読んだ「メダカ館」。人生というものを考えさせてくれた。淡々と日々をこなす人もいれば、時代を先読みしながらしたたかに生きる人もいる。浮いた暮らしをしていても大丈夫な人もいる。別に浮いていなくても見えない溝に落ちていく人もいる。淡々とした描写から登場人物たちの息遣いさえも聞こえてきそうだ。

「園芸世界」の雑誌を手に「メダカ館」に読みふける母の腕の中で、子がスヤスヤと眠っている。子もやがて大きくなる。この手を離れて一人で世間を歩きはじめた時、その目にこの世はどのように見えるのだろう。自分の中のどんな才能にすがってこの世を渡るのだろうか。そんなことを考えたことを思い出す。



和泉克雄氏死去 詩人 こちら → http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010030901000433.html
hontoネットストア「メダカ館」 → http://honto.jp/netstore/pd-book_02233616.html

著者は、2010年2月1日、お亡くなりになられていた。「園芸世界」での再連載の終了した年だ。93歳。詩人。グッピーの第一人者だったとのことである。

にほんブログ村 受験ブログ 中学受験終了組(本人・親)へ
にほんブログ村に参加しています!バナーをクリックしていただけると、ブログ更新の励みになります!


タグ:小説
【育児や人間関係を紐解く心理学の最新記事】
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック